食物アレルギーと仲好く付き合いましょう
4.除去食解除は1歳頃からスタート 
A食物アレルギーを予防する
 
 食物アレルギーは、アレルギー体質の獲得と食物アレルゲンへの感作(アレルゲンに反応すること)が生じて、はじめて発症します。ですから、それを防ぐには、アレルギー体質にならないようにすること。卵などのアレルゲンに感作されないことです
 1)アレルギー体質を抑え込む
 喫煙(妊娠されたお母さんはもちろん周りの受動喫煙も)はアレルギー体質の獲得・増悪に悪影響をもたらすため気をつけましょう。お腹の赤ちゃんは、当然ですが、お母さんの食事から栄養を得て大きくなります。以下の点に配慮した食生活を日頃から心がけましょう。
 基本は和食、アレルギー炎症を抑えるEPA、DHAは魚に豊富に含まれています。また、活性酸素を抑制するビタミン類など抗酸化物質を多く含む野菜などの食品を多く摂りましょう。さらに、亜鉛など微量元素を含んだ食品にも気を配りましょう。その結果、推奨すべき一皿の内容は、2分の1の野菜、4分の1の糖質、残り4分の1の蛋白質を盛りつけましょう。
 最近話題の乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティックスやプレバイオティックスは、腸内細菌叢バランスを整え、抗菌物質や免疫強化物質を産生し、アレルギーを予防する方向に作用します。
 2)アレルゲンへの感作の阻止
 妊娠前・妊娠中・授乳中
 アレルギーマーチのスタート、食物に対する感作(食物のアレルゲンに対する反応性の出現)は、お母さんのお腹の中ですでに始まっています。赤ちゃんの食物アレルギーの原因食物は、卵が飛び抜けて多く70~80にものぼります。つづいて第2位が牛乳で20〜40%、第3位が大豆を抜いた小麦で20%前後、第4位が大豆で10〜15%を占めます。日本固有の米やゴマなど、数%に認められます。料理や食材の多国籍化に伴い、ピーナッツやアーモンド、キウイフルーツなどの西洋食材に対するアレルギーも増加傾向にあります。
 食物アレルゲンに対する感作が妊娠初期から起こりうることから、妊娠が判ったら、速やかに、卵や牛乳、小麦、大豆蛋白などの偏った摂取(多量・頻回)を控えることは、食物アレルギー発症予防および軽症化につながると考えられます。具体的には以下のような方法を提案します。
 原則として、妊娠したからといって、栄養的にいいだろうと思って、あわててふんだんあまり食べない卵や牛乳その他の食品を摂りださないこと。普段どうりが基本です。
 
アレルギー予防のための妊娠中・授乳中のお母さんの食物調整

  卵料理は控える。ケーキなど卵しよう製品は節度ある量・頻度で。二次製品は可。
牛乳  沸騰乳(前もって一度沸騰させたもの)を200ccまで。チーズ、ヨーグルトは妊娠以前の量・頻度を超えない。
小麦  主食としての小麦製品(パンや麺類)は、一日一食まで。
大豆  豆乳、納豆は週3回まで。大豆油を摂り過ぎない。 
  十分に精米したものをよく砥ぐ使う。無洗米も
その他  えび、カニなどの甲殻類は摂りすぎない。ソバやゴマ、ピーナッツなど種実類やナッツ類も摂り過ぎない。インスタント食品や甘味料も摂り過ぎないように注意する。 
 授乳中・離乳食中 
  お母さんの食品の取り方は、妊娠中と同様な注意が必要です。お母さんの摂取食品の全てが母乳を通して赤ちゃんに移行します。生後2〜3か月頃になると、赤ちゃんのアレルギー体質の現れとして顔や全身の湿疹がでてくることもよくあります。1か月以上続くときには専門医に相談し、アレルギーに関係するものかどうか、また必要があればアレルギー検査を受けましょう。アレルギーでも早期発見早期治療が一番です。食物アレルギーが明らかになった場合には、当該アレルゲンを含む除去食が必要です。除去食を行う際、専門医、栄養士の助言のもとに、代用食品を利用しながら行い、決してカロリー不足やカルシウム不足にならないように注意しましょう。一般的には、完全除去は長くて1歳半頃までで、その後は二次製品からなどから次第に解除していきます。赤ちゃんのアレルギーが強い場合、母乳を続けるなら、お母さんも除去食を厳しく行うことになります。そのような場合、お母さんにとって大変なストレスとなります。ですから、お母さんの厳しい除去が必要な場合には、躊躇することなく人工栄養に切り替えるべきだと考えます。
 赤ちゃんの食事
  離乳は通常の6か月から開始。5か月になって、よだれが溢れ出した頃から野菜スープで肩慣らし。開始1か月の間はおもゆ、イモ類、野菜で、その後とうふやお魚の蛋白を開始。二次製品を含め卵を使ったものは3回食になってから慎重に進めてください。初めての食品をあげる際、唇の粘膜部に、ひとかけら、液状のものは1滴くっつけて、5〜10分間付着部分の変化を観察し、発赤腫れがないことを確認するようにしましょう。その後は一口づつ間隔をとりながら増量していきます。卵や牛乳、大豆、小麦製品を含むものを初めてあげる時には特に注意しましょう。
 1歳半頃には、免疫機能を含め、消化菅の諸機能も発達してきます。その頃には食物アレルギーも落ち着いてきますので、それまで控えていた色々な食品にチャレンジしましょう。
 食物アレルギーとは直接関係ありませんが、牛乳は、蛋白濃度が濃く、赤ちゃんの腎臓や代謝に負担を掛けます。牛乳アレルギーがなくとも、1歳を過ぎるまでは、牛乳やチーズなどの乳製品は摂り過ぎないように注意しましょう。