アトピッ子を作らない7か条

Ⅰ)薄着で育だてよう

アレルギー体質のヒトは、『乗り物酔いをする』とか『風邪をひき易い』等がよく認められ、環境の変化とりわけ温度や気圧が急に変わったときなどに体調を崩しやすいものです。そのため厚着になったり、過保護になりがちです。ヒトは本来、環境の変化、暑い寒いを皮膚で感じて、それに応じて毛穴をすぼめたり、発汗して、体内をコントロールしています。ところが、厚着をしていると、皮膚のセンサーが働らくことが難しくなります。その結果、環境の変化についていけづ、風邪をひき易くなったりします。でも、こういった症状は、自律神経のアンバランスによるものと考えられます。これを克服する方法として、水かぶりや乾布マサツが行われています。温度差や物理的刺激を皮膚に与えることで、気道粘膜その他の内蔵の自律神経バランスを整え、免疫系や内分泌系を活性化しようとするものです。短期間で効果が期待できるものではありませんが、日々習慣的に行っているうちに、気がつくと『うちの子は最近風邪ひかないね』といった具合になることでしょう。ぜひとも薄着で育てましょう。

         
            Ⅱ)食事内容に気を配る


 アレルギー疾患の増加した一因に、日本人の食生活の変化が挙げられています。インスタント食品に、加工食品が氾濫し、魚離れ、野菜離れを来たし、それに伴いビタミンやミネラルなどの微量元素不足が進んでいます。その結果免疫力、抵抗力の低下が生じたと考えられます。また、摂取カロリーについては、カロリーオーバーでもカロリー不足でもともにリンパ球等の免疫機能が低下することが解っています。程々がベターです。和食の主蛋白源である魚には、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)が多く含まれ、アレルギー反応を抑える効果があることが種々の研究から明らかにされ、アレルギー疾患治療にも応用されています。
 また、海藻類やシソの実、えごま等に多く含まれるαーリノレン酸もアレルギー体質を抑える作用があります。 
 さらに、ビタミン
C(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、カロチノイド、フラボノイド、グルタチオン、フィチン酸などは、野菜に豊富に含まれ、これらにもアレルギー炎症を抑える作用が確認されています。亜鉛、銅、マンガン、セレンなどの微量元素もアレルギー炎症を抑えるのに必須です。
 以上から、現在社会で推奨すべき一皿の内容は、2分の1に野菜、4分の1に糖質、残り4分の1に蛋白質を盛りつけた一皿です。野菜と魚介類をたっぷり使った食生活を子どもの頃から身につけることは、アレルギー予防だけでなく生活習慣病の予防に繋がります。
参考:(食物アレルギーの予防)

              Ⅲ)スキンケアをしっかり


 皮膚には、外界から身を守るという重要な働きがあります。アトピー性皮膚炎や赤ちゃんのでは、皮膚の角質層のバリア機能と水分保持機能の異常が認められ、アトピー皮膚炎や赤ちゃんの皮膚トラブルにおける重要な発症・悪化因子の一つと考えられます。
 アトピー性皮膚炎発症の予防として、新生児期から保湿剤でスキンケアすることで、その後のアトピー性皮膚炎の発症率の低下することも報告されています。
 お母さん、お父さんや赤ちゃんの兄弟にアトピー性皮膚炎があったり、皮膚が弱い方がいる場合には、発症前からスキンケアを丁寧に行うことが、赤ちゃんの皮膚の健康を保つだけでなく、その後のアレルギー症状の発症や軽症化に、とても大切です。


            Ⅳ)腸内細菌叢をアレルギーを起こしにくい方向に保つ

 最近注目されているのが,免疫機能と腸内細菌叢の関係です。ヒトの体の中で,最大の免疫器官である腸の状態が,その人の免疫機能つまりアレルギー体質に影響することが判ってきました。いわゆる乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が優位なときには,免疫系をTh1優位に向かわせ,アレルギー反応を起こし難くするだけでなく老化や発ガン抑制にも繋がると考えらています。
 このように乳酸菌やビフィズス菌のような生菌製品はプロバイオティクスと呼ばれています。またこのような種々の菌の増殖を助けたり,それらの活性を高めるオリゴー糖や食物繊維などの難消化性食品成分をプレバイオティクスと呼びます。プロバイオティクスおよびプレバイオティクスは、腸内細菌叢に作用し、腸内有用菌(善玉菌)の増殖を促進、あるいは有害菌(悪玉菌)の増殖を抑制して、腸内細菌叢バランスを改善し、抗菌物質、免疫強化物質などの産生からアレルギー予防に至ると考えられます。
 具体的にはこのような生菌を含んだ製品や食物繊維を豊富に摂取することは、アレルギー予防や治療になると思われます。一つ注意して欲し点は、このような生菌を使った食品はヨーグルトなどのいわゆる乳製品であることから、牛乳アレルギーに繋がることもあり、乳蛋白の含量のすくないものを選んだり、生菌そのものだけを摂ることが推奨されます。


                Ⅴ)禁煙

 アレルギー予防の立場からだけでなく、妊婦の喫煙は禁忌です。父親や祖父母など同居者による受動喫煙も胎児への影響が大きいことが判ってきました。流産、死産の原因だけでなく、SIDS(乳児突然死症候群)、低身長の原因でもあります。低出生体重児(=出生体重が2500グラム以下の赤ちゃん)、早産児、胎児低酸素症など未熟児や低出生体重児で生まれたことが、アレルギーの病気への危険因子の一つでもあります。アレルギー体質への直接的な影響としてIgE抗体産生を増加させることが考えられています。
 また、喫煙家庭において、家族のアレルギー反応を増悪さ、気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎に罹患することが多いこと。気管支炎や肺炎など気道の感染症も増えることが明らかにされています。

  
   Ⅵ)ダニ・ホコリ・ハウスダストおよびシックハウス対策

 今繁殖しているダニを一掃できても、同じ環境をつづけるなら、数ヶ月で元の木阿弥です。ですから、じゅうたんを剥がしたり、生活湿度を下げるなどライフスタイルの変更が不可欠です。公衆学的な検討から①気密性の高い住宅。②一人当たりの生活スペースが狭い。③じゅうたん、カーペット敷き。④室内ペット飼育。⑤喫煙者あり。のような環境でダニ感作が助長されることが解っています。生活環境・ライフスタイルの改善が必要です。
 ダニ・ホコリ・カビ・シックハウス対策の具体的方法は最後にまとめましたが、著者一押しの寝具対策をお話しします。アレルギーを起こすダニは温度50℃の環境を30分つづけることで、死滅します。したがって、家庭用の布団乾燥機で十分です。方法は布団袋などの密閉空間を作り、その中で乾燥機を30分間作動させます。そのあと掃除機で布団や毛布の表面をしっかりと吸引すればOK です。

 シックハウスは、新居に入居後やリフォーム後あるいは新しい家具や暖房機の購入といった住環境や生活環境の変化をきに発症してくることがほとんどです。規制化学物質については低濃度あるいは無含有の木材や壁紙が供給され、いわゆるシックハウスは減少するものと思われますが、それより低濃度で発症する化学物質過敏症や規制外の物質は無数にあります。従ってそういった状況下においては
、予防的観点から,以下の点に配慮し、自衛することが一番です。
 暮らし方では、換気が一番重要。換気することで生活湿度が低下するため、ダニやカビの繁殖も防ぐことになり一挙両得です。ポイントは風の道を造ることで、対角方向に窓を開けるようにする。換気のタイミングは、調理中や冷暖房時には少なくとも1時間に5分間程度の割合で行いましょう。 
  


ダニ・ホコリ・カビおよびシックハウス対策 

【ライフスタイルを変える】   ●じゅうたん類は敷かない。
 ●布製のソファーは使わない。
 ●風通しがよく、掃除のしやすい部屋にする
 (調度品やなど物を多く置かない)。
 ●ペットは飼わない。
 ●タバコは吸わない(家族全員)。
 ●冷暖房システム・調理システムの改善。
【温度・湿度に注意】   ●暖房時の室温は15~20度、冷房時の室温は25~28度   程度にし、ともに効かせすぎに注意する。
 ●湿度は50%前後が理想である。加湿器使用時は、50%  を超えないように注意する。
 
【換気をしっかり】   ●住宅ないの通気をよくし、換気をこまめに行う
 (少なくとも1時間に5分間の割合)。
 ●暖房器具使用時には特に注意。
 
【掃除をしっかり】  【住居・部屋】
 ●掃除はまめに、とりわけ寝室は、毎日時間をかけて行う。 
 ●拭き掃除が大切です。
 ●じゅうたんやホットカーペットは、入念に
 (一畳あたり5分以上かけて行う)
 
【寝具の対策が重要】
 ●衣類乾燥用袋付きの布団乾燥機で、寝具を乾燥袋に  いれ、乾燥(25度以上で30分)させる。
 ●寝具のダニを死滅させ、そのあと掃除機で布団の両面を吸引  する。天日干しでは殺ダニ効果は期待できません。
 ●タオルケットや布団カバー、枕カバー、カーテンなど洗濯可能な  ものは、定期的に洗濯。
 ●毛布、枕、ぬいぐるみなど洗濯できないものは、布団と同様方  法が一番です。
 
                               (ダニ・カビ・ハウスダスト対策も参照して下さい)
    
        Ⅶ)ペットの飼育に注意


 癒しの流行と相まってペットセラピーが話題を呼び、ペットブームはますます過熱化しています。一方ペットに寄生するイヌ・ネコ回虫やパスツレラ症,オウム病などの寄生虫症の増加も指摘され、餌の与え方など適切なペット飼い主関係を保つ必要性が叫ばれています。
 アレルギーとの関連では、イヌやネコ等の動物関連物質にはアレルゲン性が強いものが多く、1か月程度の短期間の刺激でも、それらに対するアレルギーが成立し得るものと考えられます。1歳以下の赤ちゃんのアトピー性皮膚炎患児のうち23.8%、約4人に1人はネコやイヌのアレルゲンに対する抗体を持っていました。中には里帰り分娩のためわずか1か月足らずの間に実家でのネコやイヌによって抗体ができあがったと考えられる赤ちゃんも経験されました。また、飼っていたハムスターに咬まれアナフィラキシーショックを起こし、病院に担ぎ込まれた子どもが相次ぎ話題となりました。このように最近ではペットもうさぎやモルモット、プレリードッグなど多種にわたり、接し方もますます濃厚になり、それに伴うペットアレルギーの増加が心配されます。
 ペットを室内で飼育することは、その動物の毛やフケ、唾液などがアレルゲンとして働くだけでなく、ダニやカビの栄養源となり、ダニやカビの繁殖も促します。家族にアレルギーの病気のある家庭では、飼うべきではありません。現在飼っているペットをすぐにどうこうすることは難しいことですが、室内よりは庭先、屋外へと移して飼育したり、ゆるす限り頻繁にシャンプーやグルーミングをするようにして、少しでもアレルゲンを減らすようにしましょう。また、えさの後始末を含め、まめに掃除をしましょう。
 ペットアレルギーに関しては、ペット飼育が返ってその後のアレルゲン感作に予防的に働く可能性を示す研究報告が海外でいくつか報告されており、今後の研究が期待されますが、現時点ではその他のアレルゲン同様できるかぎり身の回りから当該アレルゲンを少なくすべきと考えます。