金属アレルギー 
はじめに 
 金属アレルギー(metal allergy)とは、金属アクセサリーや歯科金属などの金属により発症するアレルギーである。金属がアレルゲンとなるものではなく、汗などの体液に溶け出した金属イオンが人体のタンパク質と結合して、アレルゲンとなる。また、アレルゲンとなり得るものは、チョコレートや豆類、お茶類などの飲食物や化粧品にも含まれる。金属アレルギーの頻度では、水銀が60%、次にニッケル、コバルト、スズ、クロムが各々35%前後と報告されている。
  症状
 アレルゲンに対する抗体が作られた場合、それらの抗体が全身に分布することになる。したがって、発症したときには、金属との接触部位だけでなく、全身の部位あるいは離れた部位のみに皮膚症状が出現することもある。定型的なものはなく、様々な部位に、様々は重症度で皮膚炎を起こす。また、チョコレートを食べると皮膚炎が悪化する印象のある方では金属アレルギーも疑うべきと考えます。
診断及び治療 
 金属との接触から発症までの期間は様々であるため、アクセサリーや歯科金属との接触部位に発症するかぶれ(接触皮膚炎)のある場合は、診断は容易であるが、難治性あるいは全身性の皮膚炎の原因検索として、金属アレルギーを疑った場合には、金属アレルギーの発症機序が主にW型アレルギーで生じるため、皮膚を使ったパッチテストが行われる。通常、上背部に疑われるアレルゲン物質を48時間貼付し、48時間後、72時間後さらに1週間後にも判定を行うこともある。入浴制限などやや負担のかかる検査であり、偽陽性反応(過去の感作や交差反応)もあるため、判定には経験が必要と言われる。もう一つは、血液を用いたリンパ球幼若化試験があるが、まだ評価は一定していない。実際的には、食物アレルギーと同様、疑われる金属物質を多く含む食品を除去し、症状の改善を確認し、その後再度それらの食品を負荷し、症状の再燃を確認する方法である。治療に際し、歯科金属除去を行ったその数日後に症状が一時的に悪化することが度々経験されるが、除去に際し金属扮の誤嚥によるものと考えられる。
 予防
 花粉症やアトピー性皮膚炎などアレルギーのある方では、金属アレルギーに用心する必要がある。アレルゲンとなる金属は、歯科金属や金属装飾品だけでなく革製品や化粧品、メガネフレーム、ヘアピン、下着の金属部分など様々なものに含まれる。歯科治療に関しては、低あるいは無金属治療を心がける。また、チョコレートなどの食品にも含まれるため注意が必要です。
金属を多く含む食品 

以下に金属含有量の多い食品を示しました。

ニッケルを多く含む食品 
穀類  はと麦、小麦胚芽、米ぬか・・・ 
豆類   インゲン豆、大豆、きな粉、納豆・・・
菓子類   チョコレート・・・
魚類   ハマグリ、アサリ、生ウニ・・・
種実類   アーモンド、胡麻、クルミ、ピーナッツ、ココア・・・
藻類   干ひじき、昆布・・・
 野菜類  シソ、タケノコ、ワラビ・・・
キノコ類   なめこ、ヒラタケ・・・
 飲料  コーヒー、お茶、紅茶、ウーロン茶・・・

  クロムを多く含む食品
穀類   小麦麦芽、米ぬか・・・
菓子類  チョコレート・・・ 
魚類   マイワシ丸干し・・・
種実類   エゴマ・・・
乳類   パルメザンチーズ、チェダーチーズ・・・
飲料   お茶、ウーロン茶・・・
タバコ   

コバルトを多く含む食品 
穀類  小麦胚芽、玄米、米ぬか・・・ 
藻類 アオノリ、干しひじき・・・ 
 種実類 アーモンド、クルミ・・・ 

 銅を多く含む食品 
穀類 オートミール、小麦胚芽、米ぬか・・・ 
豆類  小豆全粒、きな粉・・・ 
菓子類  チョコレート・・・ 
魚類   あんこうキモ、イカ、エビ・・・
種実類   アーモンド、クルミ、ピーナッツ・・・
藻類   干しいわし、のり・・・
野菜類   切り干し大根、パセリ、枝豆・・・
キノコ類  干ししいたけ・・・
飲料   お茶、紅茶、ウーロン茶・・・

スズを多く含む食品 
穀類  小麦胚芽、米ぬか・・・ 
豆類  麦みそ・・・ 
菓子類  チョコレート・・・ 
魚類   うるめいわし丸干し、さんま蒲焼・・・
藻類   寒天、昆布・・・
飲料  インスタントコーヒー・・・

亜鉛を多く含む食品 
穀類 小麦胚芽、米ぬか、ライ麦、はと麦 
魚類  かき、するめイカ、タラコ・・・
種実類   胡麻、きな粉、大豆、アーモンド、ピーナッツ・・・
藻類   焼き海苔、ひじき・・・
肉類   牛肉、豚肉・・・
乳類  パルメザンチーズ、チェダーチーズ・・・
菓子類   チョコレート・・・
飲料   コーヒー、紅茶、抹茶・・・

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