スギ花粉症対策 
はじめに 
 近年の花粉飛散量は、過去10年前と比較して2倍以上に増加しています。2017年のスギ・ヒノキ花粉シーズンの花粉飛散量は、関東・甲信では、昨年並みで、平年の80%~110%
程度と予想されています。

 対策の基本姿勢は、他のアレルギー疾患と同様に身の周りからスギアレルゲンを症状を誘発しないレベル以下に減らすことです。
 しかし、スギ花粉に過敏なヒトでは、通常の生活の中では、大変難しく不可能かもしれません。少しでも症状を軽くするためにも不可欠な治療です。
 環境調整に加え、過敏な体を強くし、スギ花粉の嵐に耐え得るようにする方法として、薬物を中心とした治療があります。
 両治療をうまく組み合わせることが重要です。
  T.スギ花粉飛散についての基礎知識
 1.花粉飛散の多い日と少ない日
 スギ花粉は、飛散開始後一週間から10日後くらいから量が多くなり、その後1か月間が最も飛散量が多くなります。また、特に@晴れて、気温が高い日、A空気が乾燥して、風が強い日、B雨上がりの翌日などに一段と多くなります。
 2.一日のうちでの飛散量の増減
 
東京都におけるスギ花粉の飛散量は、平均的には午前11時頃から増加し、午後2時頃まで多くなります。その後は午後5時頃から再び増加し、午後9時頃にようやく減少します。つまり、昼前後と日没後の数時間に増加します。これは、気温が上がる午前中にスギ林から飛び出した花粉が数時間後に都市部に到達し、そのあと上空に上がった花粉が日没後に地上に落下してくるためと考えられています。また、一年中生活ごみ、いわゆるハウスダストの中にスギ花粉も含まれており、低用量の刺激を始終受け続けることになり、スギ花粉に感作されるものと考えられる(スギ花粉に反応するようになる)。したがって、飛散シーズだけでなく一年中掃除などに気を配ることが必要です
U.スギ花粉の体への侵入を減らす 
1.マスクやメガネ、コートの利用
 
外出時にスギ花粉が鼻粘膜や結膜に付着し、それによって症状がでます。マスク、メガネの装着は、非常に効果的です。メガネは、側方から花粉が入るのを防ぐプロテクターの付いたものがより効果的ですが、伊達メガネもかなりの効果が期待できます。コートを着用し、その他の衣類への付着を防ぐことも効果的です。麻、綿、絹の素材を使った衣服は、静電気が起こりにくく、花粉の付着を少なくすることができます。また、帰宅時には、コートや衣類に付着した花粉を払い落としてから家に入るようし、室内への花粉の持ち込みを減らすことが大切です。
2.洗顔、洗眼、うがい、鼻うがい
 外出から帰宅した際は、玄関の外で、体や衣服に付いた花粉を払い落とし、まず手洗いとうがいだけでなく、洗顔と洗眼、鼻こう部も洗う。さらに鼻うがいを行う。鼻うがいは、鼻炎症状を起こす鼻粘膜上でのスギ花粉アレルゲン(抗原)とスギ花粉抗体との反応を直接阻止あるいは減弱させるため、最も効果的な対策の1つと考えられる。 
3.布団などの寝具や洗濯物対策 
 
飛散時期は、部屋干しやできれば布団乾燥機を利用して行うべきです。実際、スギ花粉症の多くの方がダニやハウスダスト、カビアレルギーを合わせ持っています。ですから、乾燥機での布団や衣類の乾燥は、ダニ・ハウスダスト・カビ対策としても効果的です。
 やむを得ず、外に干す場合には、取り込みに際し、入念に衣類に付着しているスギ花粉物質を叩き落して、取り入れるようにして下さい。
4.開窓や換気に注意
 窓や軒を開けての換気の際は、飛散量が比較的少ないと考えられる、早い午前中や午後3時、4時頃に行い、できればそのあと掃除をするようにしましょう。開窓の場合、開け幅を10cm程度にし、レースのカーテンをすると多くの花粉の侵入を防ぐことができます。やはりカーテン下などの掃除は入念にしてください。換気扇での換気が安心です。
5.空気清浄機
 
よく掃除された寝具や寝室において、空気清浄機を作動させることで花粉の粘膜への吸着を減らすことができる。あくまでも十分な掃除をしたうえでの効果です。
V.スギ花粉を跳ね返す体を作る 
1.規則正しい生活
 
十分な睡眠と食事を基本とした生活を心がけましょう。花粉症だけでなくあらゆる病気を防ぐ基本です。花粉情報や一日の飛散状況等を考慮したライフスタイルを実践し、少しでも花粉暴露を減らす工夫が大切です。 
2.自律神経バランスを整える
 
アレルギー疾患の発症ならびに症状の増悪に大きくかかわっているのが、自律神経バランスの崩れです。朝起きが苦手だったり、乗り物酔いや立ちくらみなどの症状がある方も多いのではと推察されます。急ごしらえで、完全な回復は無理ですが、普段から一枚薄着で暮らす、入浴時に水かぶりや冷水浴を行うなどの習慣をつけることは、大変効果的だと思います。
W.薬物療法
1.はじめに 
 
スギ花粉症は、アレルギー炎症により出現してくるヒスタミンおよびその他の物質により、様々な症状が誘発されてくる。主にヒスタミンの働きによりくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、など多くの症状が引き起こされます。また、鼻づまりに関して、最近の研究からロイコトリエンの関与が大きいことが分かってきました。
 従って、ヒスタミンやロイコトリエンの発生と放出を抑える作用のある薬剤が、花粉症の薬として使われ、抗ヒスタミン薬と呼ばれます。
2.抗ヒスタミン薬のいろいろ
 抗ヒスタミン薬には、開発された順番に、第一世代と第二世代(抗アレルギー薬)に分けられ、さらに第二世代は、T類とU類に分類されます。
 第一世代の抗ヒスタミン薬には、抗アセチルコリン作用があり、眠気が強く、口が渇いたり、便秘になったりすることがあります。緑内障のヒトは服用することができません。乳幼児でよく使うぺリアクチンには、鼻を止める以外に抗セロトニン作用として、下痢や嘔吐を抑える作用や食欲増進作用もあります。一般に即効性でくしゃみ・鼻水をすぐに止めたいときにはお勧めです。
 第二世代の抗ヒスタミン薬は抗アレルギー薬とも呼ばれ、T類には、けいれんを悪化させることがあり、熱性けいれんの好発時期である乳幼児には注意が必要です。眠気は第一世代よりも弱く、抗ヒスタミン作用のほかケミカルメディエーター遊離阻害作用も認められます。 
 U類はT類よりもさらに眠気は少なく、けいれんへの悪影響もなく小児でも安全に使用できます。クラリチン、アレグラには添付文書上に車の運転注意の記載もありません。
3.外用薬(点鼻・点眼
 各種抗ヒスタミン薬の点鼻薬・点眼薬やステロイド薬の点鼻薬・点眼薬があり、経口薬に比較して眠気やステロイド薬の全身性の副作用の心配なく、使用できる。しかも局所での薬剤濃度は高く、即効性も期待できる。軽症例では、外用薬のみで対応できることも多い。
4.抗ヒスタミン薬以外の薬剤
@去痰薬(ムコダインやムコソルバンなど)
 粘膜上での痰や鼻汁の切れを良くする作用を持つため、花粉症の鼻症状に対して効果があり、頻繁に使われる。
A副腎皮質ホルモン【セレスタミンなど)
 アレルギー炎症を強力に抑えるが、全身性の副作用があり、継続使用は一週間までにとどめるべきである。
B乳酸菌関連
 乳酸菌類の投与によって、腸内細菌叢バランスが改善し、アレルギー体質の軽減が生じ、スギ花粉症の諸症状が軽くなるとの研究報告があり、今後の課題である。
C漢方薬など
5.スギ花粉症に対する舌下免疫療法
 12歳以上を対象にスギ花粉症に対する舌下免疫療法が今年春頃から保険適応が認可されます。舌下免疫療法とは、舌下に原因アレルゲンであるスギアレルゲンを、低濃度、少量から投与し、徐々に増量、高濃度へ移行させ、最高用量に到達後その用量を維持用量として連日投与する治療方法で、アレルゲンに対する過敏性を減少させる根治療法の1つです。
 実際には、11月以前に治療を開始し、2週間の増量期ののち3週目以降は同じ量で維持期となる。2週間に1度の受診を数年、少なくとも2年程度継続する必要がある。また、アレルゲン服用直後の食事・飲酒の禁止、服用後2時間は激しい運動や入浴を避けるなどの制約もある。副反応として口腔粘膜の腫脹や消化器症状の出現は多いが、アナフィラキシーの頻度は明らかに少なく、治療継続率も高い。
 治療効果は、従来から行われている注射による皮下免疫療法には及ばないものの十分な効果が期待できる。痛みを伴わないことから小児では特に継続治療が期待できる。
 当クリニックでも本療法を行う予定である。

6.実際の使い方
 
第二世代抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンの発生そのものを抑えるため、予防的効果が期待できる。花粉の飛び始める2週間くらい前から飲み始め、シーズン中も継続して飲み続けることで、日常生活に支障がないレベルで乗り切ることも可能です。もちろん日常生活での花粉対策は行ってください。 
 抗ヒスタミン薬の効き目や眠気などの副作用は、個人差が大きく、1−2週間の試用期間を設け、副作用が少なくて効果の高い自分に合った薬を見つけることが必要です。
 軽症者では、外用薬を中心に、時に経口薬をプラスする。中等症以上では、第二世代抗ヒスタミンおよび去痰薬をベースに、外用剤を併用する。重症者では、去痰薬、抗ヒスタミン薬に抗ロイコトリエン薬をもプラスし、ステロイド外用薬を併用する。
 付録:花粉関連食物アレルギー(PFS; pollen-food allergy syndrome)
 スギ花粉症に限った事ではありません。花粉症の方に、リンゴやバナナなどの果物やトマト、ニンジンなどの野菜にアレルギー反応生じることが多々あります。これは、花粉アレルゲンと果物や野菜のアレルゲンの一部が共通の抗原性があり、そのために生じます。食べた際の口腔内の違和感を感じる程度の症状から生命に危険を及ぼすアナフィラキシーまで起こすため注意が必要です。詳しくは食物アレルギーについての項目を参照して下さい。

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